シソンヌのコントで職場のハラスメントを学ぶ

笑いながらも考えさせられる「飲み会のあと」

「シソンヌ」というコント芸人コンビをご存じでしょうか。
じろうさんと長谷川忍さんの二人組で、単独ライブのチケットが秒で完売するほどの大人気芸人さんたちです。
2014年のキングオブコントで優勝している実力派。最近では「有吉の壁」でもおなじみですね。


ネタは日常的なものが多く、中には「小学3年生の男子か!(笑)」と突っ込みたくなるようなものもあり(そんなネタが私は大好きですが)、ゴリゴリの「社会派」という感じではありません。

でも中には、ひとしきり笑った後に「ん?」と少し考えさせられるようなネタもいくつかあります。

そのひとつが「飲み会のあと」というネタ。

舞台はカラオケ店。べろんべろんに酔っぱらった男A(じろうさん)が、冷静に床のゲロの始末をしている男B(長谷川さん)に絡んでいるシーンから始まります。

ゲロは、先に帰ってしまった女の子(職業は新聞記者)が吐いたもの。
男Aは、合コンがうまくいかなかった腹いせに、「お前はそうやって、自分が看護師だから『こういうこともできますよ』ってアピールしてんだろ! 俺だっていつも保育園で子どものゲロの始末してるんだ。俺だってできるよそのくらい!」と男Bに絡みます。

男Bは冷静に受け流しながら会話をしますが、会話の中で徐々に、男Aが保育士で、女性の多い保育園という職場で嫌な目にあうことがたびたびあり相当なうっぷんがたまっていることが明らかになっていきます。

最初は穏やかに男Aのうっぷんを聞いていた男Bですが、男Aに「お前もだろ。お前も看護師で辛い目に合ってんだろ。言っちゃえよ」と焚きつけられ、男Bもとうとう、職場での不当な扱いや辛い気持ちを吐露していく、という内容です。

さすがシソンヌ、うっぷんを演歌やラップにして歌ってみたり、非常に面白いです。ふたりの何気ない会話の中で徐々に彼らがおかれている状況や気持ちが露わになっていく描写も、お見事としかいいようがありません。

コント作品としても珠玉の逸品ですが、コントの中でパワハラやセクハラについて学ぶことができるというのもすごいと思います(じろうさんは意図していないと思うけれど)。

詳しくはぜひ、実際のコントを観て頂きたいと思いますが(youtubeにあがっています)、少なくとも以下のようなことが描かれていると思います。

◇ジェンダー差別

 ・女性から男性へ(保育士、看護師の男性へ)

◇パワーハラスメント

・過小な要求:道理に反して、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと

・精神的な攻撃:(脅迫や)名誉毀損、侮辱、ひどい暴言など

・人間関係からの切り離し:隔離や仲間はずし、無視など

◇セクシャルハラスメント  ・男性から女性へ(政治家から新聞記者の女性へ※エピソードがコント冒頭に語られます)

このコントを観て思うのは、「保育士や看護師など、長年女性が多くを占めていた職種やその職場では、現実でもこんなことがあるかもしれないなあ」。さらに「これまで男性が多かった職種や職場に女性が入っていったときにも、同じようなことが起こるんだろうな」いうこと。

私たちにはジェンダー観の偏りを始めとしてさまざまなアンコンシャス・バイアスがあって、職場などで無意識に口にする一言にも相手を傷つけることがあるかもしれないんですよね。そういうことを意識しながら、仕事や生活をしなきゃいけないなあ…と改めて考えさせられます。授業で学生に見せて、考えてもらったりもしています。

シソンヌ、天才。大好きです(結局それが言いたい)。

シソンヌ「飲み会のあと




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