日本社会の根深い問題だ
栗田隆子さんが著した、仕事や労働に関する本。平凡社刊です。
今まさに、国会で審議されている103万円の壁(第3号被保険者制度)のことにも触れていらっしゃり、タイムリー。
ライトな文章だけど、社会情勢や歴史からの考察、さまざまな統計データなどをもとに持論を展開されていますので、「エッセイ」というジャンルには括れないように思います。
読んでみて思うのは「日本の労働や仕事の枠組みが『日本に住む日本人、日本語話者、健常者、異性愛者でシス男性、首都圏出身者』などの『マジョリティの詰め合わせ』みたいな存在を基準に組み立てられていること。それにより発生する問題が多くある」。これに尽きます。
「マジョリティの詰め合わせ」に当てはまらない人たちが、いかに不当に扱われがちかということ…。栗田さんのシビアな実体験、そして私も女性であり、いささか発達に凸凹傾向があるという意味では、非常にうなずけることが多かったです。
ことに会社などの組織で働くのが、めっぽうしんどかったですから。
大学でキャリア(就活)の支援をしていると、外国人留学生、LGBTQ(特にT)、精神疾患に罹患している方、発達に特性のある方などが「働けない」「働きたくない」という状況に陥っているケースに出会います。
個の支援だけではなかなか解決が難しいのは、社会構造に問題があるからってことなんだな…と改めて思いました。
こうした書籍が世に出ることで、なかなか日の当たらない、ともすると「怠け者」というレッテルを貼られがちな人々の存在が少しでも認知され、解決されるべき社会課題として取り上げられるようになるといいなと思います。