ああ、深い…
早稲田大学の森山至貴さん(社会学者)と能町みね子さんの、「クィア・スタディーズ」に関するDEEPな対談を収めた本です。2023年7月に出たばかり。
以前、森山さんが書かれた「LGBTを読みとく―クィア・スタディーズ入門(ちくま新書)」を読んだことがあったのですが、難しくてよくわからなかった…というのが本音でした。
で、今回「(装丁や帯に書かれていることを見る限りそう思えちゃった)カジュアルさ」に惹かれて手に取ってみたのですが、とっても興味深く、面白く読めました。
でも、扱っている事柄にたくさんの側面があって、何しろそれらが全部深くて複雑で立体的なので、理解するのはやっぱり難しかったです。「クィア・スタディーズ」、ちょっと齧っただけではとうてい理解できない、壮大なテーマなんだと思います。なので、この本をきっかけに、もうちょっと書籍を探して読んでいこうと思った次第です。
それにしてもこの本、一番初めの入門書としてすごくいいと思います。
何といっても、とんがってます。パンクです。好戦的です。大好きなテイスト。
「クィア」という言葉はもともとは強烈な侮蔑語だった(それを敢えて使ってる!)ということも書いてありましたが、そういうルーツがあるとしたら、なるほど「クィア」にパンクな、好戦的なニュアンスが含まれているのも当然なのかもしれません。
私たちはとかく、性的マイノリティを「LGBTQ+」って括ってそこにすべてが包含されるような気になってしまっているけども(何となくわかったような気にもなっているけれども)、この本はその括り方そのものへの異論から始まります。
「そんな単純なものじゃないんだ」っていうことが、森山さんのアカデミック領域のお話や能町さんご自身の体験のお話などから赤裸々になっていきます。
象徴的なのは、「『あなたはLGBTですか?』という問いは、『あなたは老若男女ですか?』と同じなんだよ」というお話。読み進めるにつれて今までの常識みたいなものが次々とひっくり返されていき、「あ~、これまでの私の理解って、何と単純で平面的だったんだ…わかった気になってたんだ~」と思わせられました。
「LGBTアライって、おかしくない?」とか。…とにかく、これまでの私の常識にことごとく疑問を投げかけてくるのです。
また、当事者にも様々な側面があることにも触れられていました。例えば、LGBとTの間の大きな溝とか。あと、結婚したい人もいればしたくない人もいるとか(とかく同性婚を認めるべし!な風潮ばかり取り上げられるけど、現実はそんな人ばかりでもないんだよ。画一的に見えるのも問題だよね)とか。…目から鱗でした。
本の後半になるにつれ、男女、家族、少子化社会について、政治のこと、幸せのあり方など、人間の根源に迫るような幅広いテーマでお話が展開していきます(これもかなりとんがった議論が展開されます)。
難しいけれど興味深いジャンルなので、これからも少しずつ勉強していこうと思います。
以下の言葉を胸に刻んで。
「私たちはここにいる、慣れることね」